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紙ふうせんだより
紙ふうせんだより 9月号 (2017/09/27)
皆様、いつもありがとうございます。台風一過に秋風が吹きはじめました。落ち葉が軽やかに舞うのももうすぐです。どんな秋が待っているでしょうか。心が穏やかになるこの季節に、やりたい事をいっぱいやれたら素敵ですね。だんだんと年末が近づいてきて、今年一年を振り返るといろいろありました。今年の流行語大賞は何でしょうか。“このハゲー”でしょうか。“もり・かけ”なんて蕎麦みたいでお腹が空いてきますね。
“関係法令に基づき適切に実施”って何? 「コンプライアンス」2つの解釈
“関係法令に基づき適切に実施”という言葉。今年はとてもたくさん耳にしましたね。行政の手続き等の不透明さや疑惑を指摘されて、おじいちゃんのみたいな官房長官が何度も「関係法令に基づき適切に実施しているため、問題は無いと認識している」と口にしていました。言葉こそ丁寧ですが、まるで説明する気がありません。「△△君、〇〇が変なのよ。何か知らないかしら?」と。先生に問われ、「ちゃんとやってるんじゃないすか?(ぼく無関係です)」みたいな他人事感。行政が何かを行使するという事は、つまり税金や国民の負託なわけですから、国民(メディアを前にしての記者会見)にちゃんと答える義務が有るはずです。官房長官は内閣のスポークスマンのような位置づけなのに、小学生以下の幼児か赤ん坊です。国民はクライアントであり、株主のようなものです。株主総会(国会)で“議事録は無い”“資料は破棄した”にも関わらず「ちゃんとやってるんじゃないすか?」って、有りですか。“関係法令に基づき適切に実施”って、つまり赤ん坊長官は何を言いたいかっていうと「コンプライアンス」に適合してるから“大丈夫”って事なんですね。コンプライアンスって医療や福祉の分野でもよく聞きます。compliance(コンプライアンス)とは、(要求・命令などへの)「承諾」「追従」という言葉です。ここから「法令(ほうれい)遵守(じゅんしゅ)」という意味が出てきます。一般的には「企業活動等において社会規範に反することなく、公正・公平に業務遂行すること」とされています。実はこのコンプライアンスの解釈に、正反対な二つのものがあるんです。
「コンプライアンス=法令遵守」
「コンプライアンスはあくまで『法令遵守』であるため、モラルに反していても法令を遵守すればコンプライアンスは成立する。“法律の不備による抜け穴を突く”行為もコンプライアンス違反にならない。逆に、モラルや人道に則った行為も、法令を破ればコンプライアンス違反となる。」言わば、モラル不要の法令至上主義。手続き等が法律に則ってさえいれば、何をやっても良いという事です。税金だって身内やお友達のために使いたい放題。これ、皆さん「承諾」できますか。官房長官や総理は「承諾してね♥」って言ってるんです。やっぱり赤ん坊です。そして可愛くない。もっとも言葉の定義や解釈はいろいろありますから、福祉職らしい“寛容”の心で許しちゃいますか。
「フルセット・コンプライアンス論」
ではもう一方の解釈です。「『コンプライアンス=法令遵守』ではなく、法令の遵守を含めた『社会的要請への適応』である。例えば企業の存在には利潤の追求だけでなく、食品メーカーであれば“安全な食品を供給してほしい”、放送局であれば“歪曲されていない良質な番組を流してほしい”など、社会からの潜在的な要請があり、各種法令にも、制定に至るまでには社会からの要請がある。法令は常に最新の社会の実情を反映できているわけでなく、司法もまた万能ではない。ゆえに、単に法令のみの遵守に終始することなく、社会からの要請に応えることこそがコンプライアンスの本旨である。」これは、郷原信郎さん達が提唱する「フルセット・コンプライアンス論」なんです。実は郷原さんのキャリアは凄いんです。(元検事で、名城大学コンプライアンス研究センターセンター長だったり日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、年金業務監視委員長、総務省コンプライアンス室長、検察の在り方検討会議委員、関西大学社会安全学部大学院特任教授だったりします)いや、キャリアに騙されちゃいけません。ちゃんと国民の利益で考えないといけません。冷静に考えると…大人な“フルセット”に“いいね!”です。
介護で考える「コンプライアンス」
法律さえ破らなければ良い。利用者さんを不安・不快にする態度(約束を破る、利用者さんを見下した態度等)でも、法律違反ではないから“オッケー”。ケアプランや訪問介護計画書で決められた内容をやっておけば、利用者さんが困ってても無視して“オッケー牧場”。本当にそう思いますか? コンプライアンスを「法令遵守」の意味だけで良しとしたら、これは有りになっちゃうんですよ。そして「法律さえ破らなければ何をしても良い」というような考えは、法律をうまく扱える者が得をし法律を知らないものが損をする「弱肉強食」という、言わば競争至上主義を理想としているんです。まさに“ブラック社会”。そんな日本で大丈夫でしょうか。もっと日本の将来について真剣に考えたいものです。私たちの介護は、「フルセット・コンプライアンス論」で行きましょうよ。それにしても“関係法令に基づき適切に実施” という言葉、なんて空虚なのでしょう。ちゃんとしろと言いたい。
あな軽し飽き風が吹く言の葉や
***************加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」
法令上、国家戦略特区法は、諮問会議の決定等の手続を経て従来の行政の判断を変更することを可能にしているのであり、その手続に則って行われている以上、法令上問題がないことは当然である。
しかし、だからと言って、「法令遵守」を超えたコンプライアンス問題がある事を否定できるわけではない。(略)
それは、総理大臣と、加計学園理事長とが「腹心の友」とい言う「利益相反」の関係にあるという問題と、公正・公平な判断ではないという疑いが生じかねない決定や手続きの「枠組み」の問題である。 (郷原信郎)
***************参考・引用 /東京海上日動/MINI VELO /警視庁