【紙ふうせんブログ】

令和5年

紙ふうせんだより 6月号 (2023/07/25)

皆様、いつもありがとうこさいます。湿度をはらんだ生暖かい空気が身体にまとわりつくこの季節は、新年度の対応疲れと気候の変化が相まって、溜まった疲れが身に影響を及ぼします。近年は五月病のみならず「六月病」や「七月病」という言葉もあり、この時期に身の不調を訴える方の多いことや、社会的な関の高まりがうかがわれます。自分自身のリフレッシュをがけましょう。リフレッシュとは、「再び新しく」という意味です。

ストレスを溜めてしまう 「自己表現の癖」

「ストレスを溜めないように、ストレスに気が付きましよう」といったアドハイスは多くありますが、これも困惑してしまうものの一つです。人生や仕事で重要な場面ほど、対応したら「ストレスがかかる」ということを解った上で、取り組まさるを得ない状況になるからです。避けてばかりいたら意欲も自己効力感も活動性もかえって失われてしまいますから、「やるしかない」と腹をくくるしかありません。そして、開き直りは「ストレス耐性」となって何とかなってしまうものです。

とすると問題があるのは特別な場面ではなく、気が付かずにストレスを抱え込んでしまう「日常の在り方」にあります。気が付かないことに「気が付かなけれはならない」という矛盾に「なぜ気が付かないのか」と着目し過きてしまうと、内省の”沼”にはまりこんでしまうので、ここでは、自分の「感情や主張」を日常生活で表出させたり呑み込んだりしている自身の「自己表現の癖」に着目してみましょう。

介護も看護も離職理由の第一位は「職場の人間関係」にあると言われています。これらの仕事は、利用者さんを明るくするために、自分の「笑顔を見せる」というように感情を駆使します。感情労働に疲れてしまったところに、トラブルが生じてじっくりと話し合うことが必要な場面になったとします。疲れているとつい極端な対応になってしまいがちです。相手の話を聞く余裕が無く、つい感情的になって自分の主張を一方的に相手にぶつけてしまったり、表情は作り笑いだけど「聞くだけ無駄」と思ってしまって心は冷めて「無表情」になってしまったりします。このような齟齬から人間関係は悪くなっていくのです。

そもそもですが、本来のあるべきフラットな人間関係は、自分の感情や主張は「伝えるか、伝えないか」という二者択一の性質のものではないはずです。自分の感情や主張を呑み込んでばかりいては、ストレスが溜まってしまいます。ぶつけてはかりで相手の話す機会を奪っていれば、聞くことが少なくなり自分の心も淋しくなり、人のが離れていけば思い通りにならないストレスを抱えます。かといって、齟齬を避けた無難な選択として「聞く、伝える」という相手との関わりを減らしていけば、発展性は失われ袋小路に迷い込んでしまいます。お互いに「何を考えているかわからない」となってしまうからです。

改善していくために私たちにとって必要なことは、相手と「良い関係で関わろうとする意思(積極性)」と共に、「上手に聞き、上手に話す」というコミュニケーション型の習得となります。

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「言うか、 言わないか」 ではなく、 「聞き、 話す」

「話すか、話さないか」という二者択一は、自分の態度を硬直化させます。二者択一の自己主張の表出ならば、自分は話してすっきりしたけど相手からは”ちょっと…”という「自分OK、相手NG」となります。逆に相手の主張をただ聞いて呑み込むたけの自分であれは「相手OK、自分NG」となります。目指すべきは相互尊重の「自分OK、相手OK」です。「アサーション(※1)」ではこれを「アサーテイブな自己表現」と言います。

アサーテイブな態度がとれないと、人は「攻撃的(アグレッシブ)」か「非主張的(ノン・アサーテイブ)」な「自己表現」に偏ることになります。
「アグレッシブ」は、適切に「聞き、話す」という対話の大変さを回避して、相手にマウントを取ることで自分の主張を通す態度があり、相手の発言の機会を奪ってしまい結果的に反論も受け付けません。この型が暴走すると相手の非主張的態度に甘えたパワハラとなります。
一方、「ノン・アサーテイブ」は、自分を抑圧して自己主張を避けることで葛藤を回避しますが、相手に依存し「自分では判断できない」となり、ついには「自分の考えが解らない」となってしまいます。

そして両者は表裏一体の関係にあります。
こじらせてしまうと「アグレッシブ」は力関係下位には容赦なく牙をきますが、上位には何も言えすに黙って従属してしまいます。「ノン・アサーテイブ」は、突然切れてしまい攻撃性が爆発することがありますし、自分では話せない気持ちを「○○さんが言っていた」などと他人の口を借りてみたり、ゴマカシや嘘で「作為的」に相手をコントロールしようとする「回りくどさに隠された攻撃性」を持っことがあります。


どちらにしても、「自分の者えや気持ちを捉え、それを正直に伝えてみようとする」「伝えたら相手の反応を受けとめようとする」というようなアサーテイブな自己表現の積み重ね不足があり、偏りが「型」となってしまっているのです。そうであれば、日頃から誰に対してもアサーテイブなコミュ二ケーションを心がけたいものです。それが、自分がアサーテイブになっていく練習でもあります。

自分の態度を 「解放」 していく

しかし、「絶対にアサーテイブになれない相手はいる」「そんなの無理!」と言いたくなることもあるでしょう。実際かなりやっかいな人もいますが、あの人は「変わってるから、自分勝手だから、性格だから、理解力が無いから、病気だから」などとして、相手を安易に決めつけて自分から壁を作ってしまうのなら、自分にも偏りがあるということです。

アサーションでは、「アサーション権」という権利(基本的人権)があると考えます。これは「誰しも相手の自己表現を奪ってはならないし、自由に自己表現をする(しない)権利がある」というものです。これは、「誠実・率直・対等な自己表現は自己責任において実現可能である」ということを意味しています。相手に自己表現の在り方を強制することは出来ませんが、自分のコミュニケーション力を高めて自分がアサーテイブな自己表現ができるようになれば良いのです。そうすれば、自分の被害や加害やストレスは軽減できるはずです。

「自分の者えや気持らを捉え、それを正直に伝えてみようとする」「伝えたら相手の反応を受けとめようとする」ということは、支援関係の原点でもあります。利用者さんを決めつけて、「利用者さんの自己表現」を奪ってはいないでしようか。利用者さんに対して新鮮な見方ができるように日々心がけながら、今日も再び向き合っていきたいと思います。

※ 1「アサーション」はアンドリュー・ソルターの条件反射療法(1949)が源流と言われているが、行動療法や認知行動療法と共に発展してきた。「OK」という言い方は、交流分析の「I am 0K/ You are OK」や[I am OK/ You are not OK」から来るが、こではOKの対義語として和製英語の「NG」 (no good)と表記した。

 

紙面研修

アサーションとは

アサーテイブな自己表現の実現は 「エンパワーメント」 そのものである

「アサーション」は、米国の「公民権運動」や「女性解放運動」等と影響を与え合いながら発展してきたと言われています。アサーションは、差別や抑圧されてきた人々が適切に自己主張し、声をあげる方法だったのです。平木典子の『アサーション入門』によるとアサーションは、「もともとは、人間関係が苦手な人、引っ込み思案でコミュニケーションが下手な人を対象としたカウンセリングの方法・訓練方法として開発されました。

ところがやがてそのような人たちだけを対象に支援していても、効果はあがらないことが分かってきました。なぜなら、よく観察すると、問題はコミュニケーションが苦手な人だけでなく、彼らを取り巻く他の人々の問題であること、つまり、ぎくしやくする人間関係の裏には、悩んでいる当事者だけでなく、自己表現を踏みにじったり押しつぶしたりする人々の問題が関わっていることが分かってきたからです」とあります。

そこで、「(弱い側だけではなく)力や権威を行使する側にもアサーションという考え方を意識してもらう必要がある」と考えられるようになっていったのです。現在、アサーション研修は、企業などでコミュニケーションスキルの研修やハラスメント研修として活用されています。

私たちは 利用者さんに対して 「自己表現を踏みにじったり押しつぶしたりする人」と成り得る立場にあります。虐待やハラスメントが発生する土壌には、必ずアグレッシブやノン・アサーテイブな表現があり、それが関係性へと発展・固定化していく過程があります。虐待やハラスメントを未然に防ぐためには、各人がアサーテイブな表現や関係を心がけることから始まります。

私たちの支援する利用者さん夫婦には、時々「アグレッシブ、ノン・アサーテイブ」の組み合わせを見かけることがあります。これについても、お互い(特にノン・アサーティブ)が最初からそうだったわけではなく、偏った表現が関係へと固定化していってしまったものでしよう。

アサーションは「誠実・率直・対等・自己責任」を柱としていますが、この4つは「心理的安全性」と同じものと考えられますので、これらが職場で重視されていれば必ず「生産性」も高まってくるでしよう。ノン・アサーテイブなメンバーが職場にいて「生産性」が低く留まっているというような場合には、先輩や上司社員がアグレッシブでそうさせてしまっている「上の責任」という面もあるでしよう。

(アサーション権における「自己責任」とは、全ての人には自分の責任を全うする権利があり、過度な責任を押し付けられたり、責任を果たすことを奪われたりしないことであり、自分が「自分の責任を果たす」ことに積極的になれる状況、「自分の責任」をためらいなく口に出来て実行でき、失敗も許容される状況などを意味します。また、アサーティブな自己表現は、自分自身に対する「自己責任」を深く自覚するからこそ実現可能となるのです)

①【A ~ Eの設問に答えてみよう】(平木典子「アサーション入門」より)
A 危険や恐怖に出会うと、心配になり何もできなくなくなる (日頃の思うことと)
まったく合ってない・
あまり合っていない・
どちらとも言えない・
かなり合っている・
非常に合っている
B 過ちや失敗したら、責められるのは当然だ
C 物事が思い通りにならないとき、苛立つのは当然だ
D 誰からも好かれ、愛されなければならない
E 人を傷つけてはならない
 

②【A~ Eの主語はなんだろう】

・自分・まわりの人(他人)、そのような人はいる ・世間一般や常識やルール

 

解説: A~Eの考えは例示であるが、そのような固定的な価値観や考えを強く持っていると自分の考えが縛られてしまい、アサーションが苦手となりがちになります。それらの考えの主語が「自分」であれば、その部分では非主張的になりやすく、世間一般の常識として捉えていると(自分の側に常識や正義があると思うから)その部分では他人に対して攻撃的になりやすい。

 

考えてみよう

「アグレッシブ、ノン・アサーテイブ」の組み合わせや「アグレッシブ」のぶつかり合いの夫婦や家族と関わる時、両者の間に入ったり関係調整を試みたりする支援者の態度や表現は、どのようなものが望ましいだろう。

(関係の調整や良い方向への転換や発展は、「悪者」を一方的に決めつけなければ可能です。そのような方向づけができれば、「自己統合」「自己実現」への大きな支援になると考えます。)

 
【アサーション】 Assertion

アサーションとは、相手を尊重しつつ自分の意見を伝えるコミュニケーション方法の一つです。

アサーテイブネス(assertiveness)は直訳すると「自己主張」となり、アサーションについて長年にわたり研究してきた臨床心理士である平木典子氏は「アサーションとは自分も相手も大切にする自己表現」であり、「自分の考え、欲求、気持ちなどを率直に、正直に、その場の状況にあった適切な方法で述べること」としています。

近年アサーションが注目を集める背景には、職場でのストレス増加があります。ハラスメントの発生件数が増えたことと、テレワークの普及でコミュニケーションでの課題が多くなったことが原因です。ストレスが大きい環境の中で、「対等な立場で話せる」「言いたいことを言える」「相手に不快感をあたえずにNOをいえる」メリットを持つアサーションは、有用なコミュニケーションスキルとして脚光を浴びています。 (Webサイト「日本の人事部」)
 
【アサーション9つの実行スキル】

1.     主張する価値があるかどうか、自問してみる

2.     タイミングに注意を払う:相手の置かれている状況を考慮する

3.     「私メッセージ」を使う:私を主語に使うことによって提案型になる

4.     否定ではなく肯定的に使う

5.     具体的に言う:自分の意図を相手が感じやすいように

6.     依頼の言葉の基本形は「感情+説明理由+依頼内容」

7.     断りの言葉の基本形は「謝罪(感謝) +説明理由+断りの表明+代替案」

8.     非言語チャンネルを使う:言葉だけではなく身体的動作を利用する

9.     聴くスキルを使う:自分の主張の合間に生じる相手の応答にも注意する

(Webサイト「産業保健新聞」)

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