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平成27年

平成27年2月 紙ふうせんだより (2015/03/12)

皆様、いつもありがとうございます。だんだんと暖かくなってきてほっとしています。昨年のような大雪が無いのが救いです。天気が悪いと事故が起こらないかなと心配になります。

さて、心配の種は、実はいたるところに転がっています。電車に乗れば電車の事故、交通事故、通り魔の凶行、食品の偽装や汚染、放射線被ばく。血圧やコレステロール値、巨大地震はいつ起こるかわかりません。しかしそういった心配事に振り回されずに、日常生活を過していけるのはなぜでしょう。

不安をコントロールする扁桃体

脳科学では、扁桃体という部位が“不安”とロゴ

いう感情をコントロールしていると考えられて

います。扁桃体が機能しないある人は、薬物中

毒者にナイフを突きつけられ「殺すぞ」と脅さ

れてもまったく恐怖を感じることがなかったそうです。扁桃体を削除したマウスの実験では感電する装置にセットされた餌を、何度

感電しても食べようとします。この事から、痛みを予測して適切に恐れる機能が失われ、欲求のままに行動していると考えられま

す。野生動物が自然界で生き残っていく為には、危険を本能的に察知し回避する事が重要です。その為に不安や恐れという感情があ

り、扁桃体はそれらをコントロールしているのです。そして、扁桃体の適切な活動は危険回避という生物の生存に必要な防御作用ですが、何かをきっかけに活動が過剰になってしまうと、常に強い不安にさらされる“うつ病”になるという仮説が立てられています。

心身の防御機能の過剰反応

どうして扁桃体が過活動になってしまうのでしょうか。脳内ホルモンのバランスなど、さまざまな説明がなされていますが、ここでは現代病の一つであるアレルギー疾患を例に、考えてみたいと思います。アレルギーとは、人間の体に害を及ぼす異物に反応して体の防御機能が働くべきところに、防御機能が過敏になり害のないものにまで反応してしまっている状態です。なぜそのような暴走が起きてしまうのかというと、病的なまでの除菌・抗菌生活が原因の一つと言われています。仕事を失った防御機能が、余計な仕事をしてしまっているのです。『清潔はビョーキだ』(朝日文庫)などの著作があり、回虫などの研究で知られる藤田紘一郎氏は、適度に細菌と触れ合わないと免疫機能が育たないと指摘しています。

人間の免疫力の70%は腸内細菌の働きによって作られます。赤ちゃんは産まれたらいろいろなものをなめたがります。これは腸内細菌を入れようとしているのです。パンダは生まれたら必ずお母さんのうんちをなめます。なぜかと言うと、腸内細菌の持っているササを消化する酵素を赤ちゃんパンダが持っていないからです。コアラもそうです。(中略)最近、生まれたばかりの赤ちゃんで、アトピーになっている赤ちゃんのうんちを調べたら、40%の赤ちゃんに大腸菌が一匹もいませんでした。大腸菌が一匹もいないという事は、この地球上で生き物として育っていないということです。無菌室に入れ無菌の餌をあげられた実験動物みたいなものです。」(藤田紘一郎氏の講演より)

の論旨と同じ文脈で扁桃体について考えると、本来恐れを感じるべき事に、恐れを感じずに生活した結果として、突然に恐れを感じなくても良いものにまで恐れを感じるようになってしまったと、私見ですが言えなくはないでしょうか。扁桃体や免疫機能の仕事量低下による機能低下があるところに、何かをきっかけにした過剰反応が起こるという構図です。

恐れるべきことと、恐れざるべきこと

「勇とは、人が恐れるべきことと、恐れざるべきことの区別である。」とは、新渡戸稲造が『武士道』で紹介しているプラトンの考えです。人が恐れるべきことを恐れないという事は、本当に大切なものとそうでないものの区別がついていないとも言えます。それは時代が変われど常に人の心の課題であり続けました。

例えば、どんな結果になるか解りきっているのに犯罪に手を染める人や、従業員の生活や人生など一切考えないブラック企業の経営者や、自分や身内への利益誘導ばかり考えている政治家や官僚、ウソで身を飾る人や、泣き続ける我が子を無視してスマホをずっといじっている母親など、例をあげればきりがないくらい出てきます。そしてそれらの人々もまた、何かを大切に思っていて、それに対しては一所懸命に生きているので、本当に大切なものを見ていない事に気が付いていないか、開き直ってあえて無視しているのです。現代日本は、マスメディアなどもでも“勝ち組”“負け組”などの言葉を使い、他人を蹴落とす事を肯定するような物言いをしている始末ですから、社会全体が大切なものを見失ってきているのではないかと、私は恐れるのです。このような社会的状況でのうつ病の増加は、社会的病理と言ってよいでしょう。

生きることではなくて、よく生きること

プラトンはその著作で師ソクラテスの言葉として「いちばん大事にしなければならないのは生きることではなくて、よく生きることだ」と述べています。この「よく生きる」事については、過度な延命を見直してQOL(クオリティ・オブ・ライフ 生活や人生や命の“質”)を重視する方向性や、かつて介護の目的は、“三大介護”(排泄、入浴、食事)とされてきましたが、今、スピリチュアル・ケアこそが介護の目的とさえ言われるようになってきた新しい介護文化とも合致します。

プラトンやソクラテスの主張を煎じ詰めれば、よく生きて“魂”を高める事こそが、人生の目的と言えるかと思います。(ちなみにプラトニック・ラブとは「プラトン的な魂を高める聖なる愛」という意味です。)ソクラテスは「『よく』というのと『立派に』というのと『正しく』というのは同じである」と言っています。そして同時に、恐れるべき事を恐れなかった結果として、自らの魂を貶めてしまう事に警告を発しています。

私たちが介護をしていく中で、ただ単に介護というサービスを提供するだけでなく、スピリチュアル・ケアを目指していく時、その良い介護は、その生き方は、利用者さんの“魂” (スピリチュアル)を癒していくのみならず、私たち自身の“魂”を高めて行くものだと信じています。皆様はいかがでしょうか。

自らの“魂”を高めゆく生き方を探し求めていくうちに、介護という仕事に縁あって出会ったという原点を、忘れないようにしていきたいと私は思っています。

汝、自身を知れ  (以下はもうちょっと学びたい人の為に…読み飛ばしても可)

ソクラテス(紀元前469年頃 – 紀元前399年4月27日)は、「汝、自身を知れ」と、動物ではなく、本当に人間らしい生き方とは何かと追求したがゆえに、哲学の父と呼ばれています。ソクラテスに著作は無く弟子のプラトンがソクラテスを主人公として物語を書き、その哲学を現代に伝えています。なおプラトンはアリストテレスの師でもあります。

(死生観について)

「死を恐れることは、実は知者ではないのに知者であると思いこむこと以外の何ものでもないからです。すなわち、知らないことを知っていると思いこむことなのです。実際、だれ一人として死というものを知りもしなければ、ひょっとするとそれは人間にとってありとあらゆる善いものの中でも最大の善であるかも知れないということも知らないくせに、それが災いの中でも最大のものであるということをまるでよく知っているかのように恐れているのです。そしてまさにこのことが、どうして無知、それも最も恥ずべき無知でないことがありましょうか。つまり、知らないことを知っていると思いこんでいるという無知でないことが。」(『ソクラテスの弁明』プラトン著)

ソクラテスやプラトンは、“死”に対しても恐れざるべきこととしています。死とは逆の“生存”にこだわりすぎると、金銭や世俗的名誉、社会的地位ばかりに執着する事になり、かえって自らの“魂”を汚す事になりかねないことを「恐れるべきこと」としています。

(蓄財や栄誉について)

「よき友よ、・・・・できる限り多量の蓄財や栄誉のことのみを考えて、知見や真理やまた自分の霊魂をできる限りよくすることなどについては、少しも気にかけず、心を用いもせぬことを、君は恥辱とは思わないのか」(『ソクラテスの弁明』プラトン著)

ソクラテスは、人間には誰にでもある良心の命令に従って忠実に生きることが、人間の真の生き方なのだと主張しています。

ソクラテスの主張が正しいと教条的に信じる必要はありません。ただ、私たちは人間の生死や、人生の最晩年に携わる仕事をしている者として、「私自身が、人間の生き方として、一体何を大切にしようとしているのだろう」と自分自身を深めていく事は、必要な事ではないでしょうか。

画像出典:www.actioforma.net


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