【紙ふうせんブログ】

平成29年

紙ふうせんだより 7月号 (2017/09/19)

皆様、いつもありがとうございます。暑さが本番です。脱水・熱中症にはくれぐれもご注意下さい。7月は先祖供養のイベントのお盆でした。お盆は旧暦の7月15日に行われていたもので、地方では旧暦にならって8月15日に行うところが多いようです。


いずれご先祖様になる その「死」は誰のもの?

日本の農村を取材した外国のドキュメンタリーを見て、印象的な場面がありました。おばあさんが「いずれご先祖様になる」と穏やかにその希望を語っていた言葉の英訳は、“私は神様になる”でした。ご先祖様の訳語が欧米には無いんですね。日本人にとっても“ご先祖様”は人によって感じ方が異なるものですが、このような方にとって「死」は、ご先祖様になる事によって、子孫から大切にされ子孫を温かく見守る存在となる事なのです。一方、欧米にはキリスト教文化があり「死」は天国への旅立ちです。しかし洋の東西問わず「死」が恐れられているような状況について、アメリカのホスピスで音楽療法士をしている佐藤由美子さんは、『死と向き合ったとき人間が最も恐れるものは、「死」そのものではなく、死に至るまでの「過程」である場合が多いのだ。』として、誰に「尊厳」あるのかを問うています。

 

死に逝く人は「死」を恐れない? 彼らが本当に恐れていること       佐藤由美子

末期の病気の人たちにとって、死は必ずしも避けたいことではなく、待ち望んでいる変化(transition)となることもある。しかし、日本国内では、望まない延命治療を施されている末期の患者さんが驚くほど多い。胃ろうや過激な点滴などのさまざまな延命治療は、彼らが苦しむ時間を引き延ばしているに過ぎない。終末期の問題を語るとき、欧米人と日本人は死生観が違う、という点が必ずと言っていいほど話題になる。欧米人はクリスチャンで天国を信じているから、死に対する考えが違うのだ、と。

でもそれは、あくまでも表面的なことだ。死生観がどうであれ、大切な人を失うということは、人生において最もつらいことであり、喪失(グリーフ)による苦悩は人類共通である。

違いはむしろ、誰に尊厳があるかという点だ。欧米の医療では、何よりも患者さん本人の尊厳を重んじる。たとえ家族がそれを望んだとしても、末期の患者さんの命を、彼らが望まないかたちの延命治療で引き延ばすことは、非人道的・非倫理的である、と考えるのだ。

愛する人に「1日でも長く生きて欲しい」と思う気持ちは自然なことだが、「もう逝っていいよ」と言って見送ってあげること。これも遺される家族にできる最期の愛情の表現ではないだろうか。

 

 

死に至るまでの過程 「クオリティ・オブ・デス」を考える

死にゆく「過程」での悩みについて、順天堂大学で「がん哲学外来」を開設している樋野興夫さんは、それを「後悔」としています。「死」を意識した事によって『それまで見ないふりをしてきた問題が顕在化する』するというのです。そして、『「病気になんかなって、自分の人生は一体何だったのだ」と後悔している人たち』の中にある比較してしまう心の癖に焦点をあて、『自分の人生に意味が見出せないのは、いつも他人と比べているから』であり、『自分を認めることが、人生を肯定して後悔を残さないための第一歩』だとし、『死とはどういうものなのか、自分がどう死んでいきたいのかが決まっていれば、いざというときに慌てずにすみます。』と、自身の「クオリティ・オブ・デス」について考える事を勧めています。

 

人はなぜ、死が迫ると過去を悔やんでしまうのか       樋野興夫(PRESIDENT Online

死を意識した人たちの悩みは、病気によってもたらされたものばかりではありません。どちらかといえば、それまで見ないふりをしてきた問題が顕在化すると思ったほうがいいでしょう。死を意識すると、自然と感情の襞が繊細になり、いろいろなことが目に付くようになるのです。

がんになったある男性は、妻ときちんとコミュニケーションをとってこなかったことを後悔していました。病気になって仕事を休むと、家にずっといることになります。そんなとき、夫婦関係がうまくいっていないと、30分同じ空間にいるだけでも苦痛に感じるのです。(略)

世代や性別に関係なく、自分には生きがいがない、居場所がないと感じている人が非常に多いのです。ですが、そう感じている人が怠惰で自堕落な人生を送ってきたかといえば、そうではありません。一生懸命働いて、家庭でも自分の義務を果たしてきた人がほとんどです。それなのに自分の人生に意味が見出せないのは、いつも他人と比べているからです。

人間は、価値を確認するために何かと比較する癖がついています。ですが、人生においてそれは意味のないことです。どんな人生にも意味があるし、等しく素晴らしい。誰にでも、天から定められた使命や役割があります。それが世界中から認められるような偉業だとは限りません。誰かの父として、母としての役割もあるでしょう。つまり、「社長」「役員」などの肩書を取り払って、自分を認めることが、人生を肯定して後悔を残さないための第一歩なのです。

 

 

比較しない事 命のありのままを肯定する事

「比較しない事」の大切さは、子育てや教育や障害者支援でも言われています。比較された側が委縮してかえって可能性を狭めてしまう事があるからです。障害のある子どもの親には、障害を克服したいという切実な願いがあるがゆえに、他の子と比べてしまう事もあるでしょう。そんな“焦り”を防ぐために障害者支援では、障害はその子の「個性」と言ったりしています。「個性」とはその人自身「個」が持つ性分です。その人自身を尊重するという事は、「障害」はその人自身の一部としてきちんと向き合う必要があり、「障害」そのものをネガティブに考えたり、「障害」持つことを理由に、何かを排除しようとしてはならないのです。

さて、先ほどの文の「障害」を「老・病・死」と置き換えてみましょう。すると、過度な延命治療は「死」を排除しようとするものであり、病気による後悔は、「病気」を否定しようとするあまり、病気の「自身」を否定してしまっている事だと理解されてくると思います。

 

 

与えられた時間を、病気の色だけに支配されることは、やめました

小林麻央さんは、癌に侵されるなかで、『病のイメージをもたれること』を『怖れ』るあまり『周囲に知られないよう人との交流を断ち、生活するようになっていきました。』と述べています。そして、自分の理想の生き方『理想の母親像』が全く出来なくなった事に苦しみました。それは過去の自分と病を持った自分を比較し、現在の自分に『「失格」の烙印』を押し、自分を苦しめてしまう事でした。

しかし、『なりたい自分になる。人生をより色どり豊かなものにするために。だって、人生は一度きりだから。』と、病状を公開します。それは麻央さん自身が、自身の尊厳を取り戻した瞬間でした。

麻央さんの中で灯った尊厳の光は、多くの人をこれからも励まし続けることでしょう。

 

**小林麻央さんがBBCに寄稿した文(抜粋)**

「がんの陰に隠れないで!」

私は気がつきました。

元の自分に戻りたいと思っていながら、

私は、陰の方に陰の方に、望んでいる自分とは

かけ離れた自分になってしまっていたことに。

何かの罰で病気になったわけでもないのに、

私は自分自身を責め、それまでと同じように

生活できないことに、「失格」の烙印を押し、

苦しみの陰に隠れ続けていたのです。

(略)

自分の心身を苦しめたまでの

こだわりは

失ってみると、

それほどの犠牲をはたく意味のある

こだわり(理想)ではなかったことに

気付きました。

そして家族は、私が彼らのために料理を作れなくても、幼稚園の送り迎えができなくても、

私を妻として、母として、以前と同じく、

認め、信じ、愛してくれていました。

 

 

【紙面研修】

介護保険どうやって使うの?と相談されたら…

【介護保険を利用したいけど、どうしたら良いの?】

介護保険の利用対象者は、65歳以上の高齢者(第1号被保険者)か、40歳から64歳の16の特定疾病のある方(第2号被保険者)が対象となっています。介護保険を利用開始するためには、介護認定を受けなければいけません。介護認定とは、介護の“必要度”の目安となる「要介護度」を決定する事です。「要介護度」とは、軽い方から順に「要支援1・2」と「要介護1~5」の七段階あります。介護認定を受けるためには、区市町村に申請して「認定調査」を受ける必要があります。「認定調査」では、認定調査員よりさまざまな質問があり、日常生活や心身状況を確認します。そのデータをもとに、コンピューター判定と審査会(人による判定)があり、介護度が決定します。介護度が決定すると「介護保険被保険者証」が郵送されてきます。また、介護保険が使える「認定有効期間」は「認定調査」を申請した日にさかのぼりますので、初めて介護保険を使う時は、認定調査を申請した日より“暫定”でサービスを利用できる場合があります。

【どこに相談すればいいの?】

介護保険の申請は区市町村に行いますので、世田谷区でも相談に乗ってくれますが、そもそも“介護を受けたい”という方やその配偶者にとって申請等は大変なものです。ですから各地域に行政の出先機関として「地域包括支援センター」(区内27か所)があります。地域包括支援センターに相談すると、介護保険のサービス利用のレールを敷いてくれます

【地域包括支援センターに相談した後はどうなるの?】

その地域包括支援センターがそのまま担当する場合と、居宅介護支援事業所(民間企業)の“ケアマネージャー”を紹介される場合があります。ここで言う「担当」とは「ケアプラン」を作成する事です。ケアプランの作成は、地域包括支援センターが「要支援」を担当する役割分担になっていますので、ケアマネージャーが紹介された場合は「要介護」の可能性もあります。いずれにしても、担当になった方が介護保険の申請等を代行してくれます。

なお、地域包括支援センターはその地域の介護問題を包括的に対応する機関で、さまざまな業務を行っています。また、最初から居宅介護支援事業所に直接相談しても構いません。

【ケアプランって何?】

ケアプランとは、介護保険サービスを利用するための計画書で、正式には「居宅介護支援計画書」と言います。これは、公的サービスである介護保険を利用する法的根拠となります。ですから、ケアプランに記載の無いサービスは受ける事ができません。また、ケアプランを作成するケアマネージャー(正式には、介護支援専門員)が、介護の上で一番の相談相手となります。「不安なこと」や「どんな生活をしたいか」「これからどうしたいか」などのイメージをケアマネージャーにしっかりと伝える事によって、サービス事業者の選定も含め、自分に合ったケアプランを具体的に作成してもらう事ができます。自分の想いを伝える事が、サービス利用者の1番の仕事とお考え下さい。

【ケアマネージャーとの関係は?】

担当のケアマネージャーが自分に合わなかった場合は、ケアマネージャーを替える事ができます。介護保険制度の利用は全て、事業者とサービス利用者の契約に基づく合意が基礎となりますから、不必要なサービスも断る事ができますし、自分で事業者を選ぶ事もできます。ただ、ご一考いただきたいのは、人間関係はお互い様ですから、ケアマネージャーが自分の意向を聞いてくれないと感じる場合、ケアマネージャー側も“利用者さんが介護保険制度や介護生活に必要な注意等から外れようとして困っている”という場合もあります。


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