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紙ふうせんだより
紙ふうせんだより 6月号 (2017/09/15)
皆様、いつもありがとうございます。梅雨ですね。食品を出しっぱなしにしている利用者さんはいませんか? 食中毒のへの注意喚起をお願いします。また、雨天時の転倒には注意して下さい。交差点前では自転車は減速。段差の乗り越えは無理しない。階段等でのながら歩きはしない。事故にはくれぐれもご注意下さい。
その方を形作った体験を聞きたい
利用者さんの昔話を聞く事が、仕事のやりがいになっているというヘルパーさんは、とても多いと思います。できれば、その人の人生の原体験に迫るような話も聞きたいですよね。私は次のように話の導入をします。
「○○さん、生まれは何年ですか?」
「そうすると終戦時は□歳くらいですね」
「すると△△を体験している世代ですよね?」
この△△がポイントです。利用者さんの世代が共有しているような歴史的な出来事を、名前だけでも知っていれば話題のきっかけができます。自分自身の切実な体験を人に話をした時に、「ふーん…」という薄い反応しか返ってこなかったら、利用者さんは辛くなります。だから利用者さんは、話をして良い相手かを見ています。△△をヘルパーさんが知っていれば、利用者さんは安心して話す事ができます。もちろん、自分自身の青少年期の話をしたくない利用者さんもいます。その時代が、日本国民に(周辺諸国民にも)大日本帝国政府が、塗炭の苦しみを強いた時代だったからです。△△の話題を利用者さんに振っても反応が薄ければ、この話題は終わりです。多くの方の共通項の一つの△△に、「学徒動員」があります。
利用者さんの生きた時代背景を知る
利用者さんの戦争体験を伺うと、従軍した経験はほとんど聞かれなくなってきました。その世代の多くが鬼籍に入ってしまったのです。今聞くことができる話は、学徒動員の話が主です。第二次世界大戦末期の1943年(昭和18年)以降に深刻な労働力不足を補うために、中学校以上の生徒や学生が軍需産業や食料生産に学徒勤労動員されました。
【ある利用者さんの話①】
私はね、学徒動員で無線を作ってたんですよ。それである意味、東條首相に命を救われましてね。大学生も徴兵されるようになった時(1943年10月)、理系の学生は兵器開発のために徴兵猶予されてね。それで、戦争に勝つために無線の誘導装置を開発していた。当時、B29は無線誘導で夜間でも視界が無くても日本を爆撃できた。一方で日本の飛行機は、経験の未熟なやっと操縦ができるくらいの若者が乗って、有視界飛行で島伝いに南の島の米軍基地を目指した。でも、途中で迷ってしまって、燃料切れでほとんどが海に落ちてしまった。ようやくたどり着いて爆弾を1個落としても帰りの燃料が無い特攻作戦。それを、奴さんたちチューインガム噛みながら、ブルドーザーで滑走路を数時間で直してしまうんだよ。日本じゃ“もっこ”かついで数日かかるのにね。これじゃあ勝つわけないよ。
【ある利用者さんの話②】
学徒動員されて立川の工場で飛行機を作っていた。米軍の爆撃があってその度に防空壕に入った。一度外で作業していた時に、突然飛行機がやってきて機銃掃射を受けた。走って2メートルくらいの川に飛び込んで頭まで潜って命は助かったけど、逃げ遅れた友人は死んでしまった。トラックの荷台に乗せられて移動している時に、被弾した飛行機から落下傘で米兵が降りてきたのを見た事がある。人が集まって来て寄ってたかってその米兵をなぶり殺しにしてしまった。惨いものだった。
前へ倣え!なおれ!右向け右!
学徒動員は1938年から部分的に始まっていますが、1943年6月に「学徒戦時動員体制確立要綱」が東條内閣によって閣議決定されてから、学徒動員は通年行われる“強制労働”と化していきます。閣議決定で興味深いのは、「教育錬成の一環」として“労働”が“教育”とされた事でしょう。教育勅語によって定められた教育の目的は子供自身の未来のためではなく、国難があれば国家に命をささげる「臣民」の育成にありました。だから学校教育は軍隊を模しており、命令に絶対服従の人間を育てる“強制”が“教育”で、軍事教練も“義務教育”でした。「愛国心」も当然義務、「学徒尽忠の至誠を傾け」に少しでも意見を言えば治安を乱そうとしている“疑い”で事情聴取の名目で連行しリンチを加え、拷問による自白強要・殺人もありました。これらは普遍的な人権意識からは「人権侵害」です。しかし当時の政府には大日本帝国憲法や法令という錦の御旗がありましたので、何の痛痒もなく「法令に基づいて粛々と進めており、そのような指摘は全く当たらない」等と言うことができました。
「学徒戦時動員体制確立要綱」 昭和18年6月25日 閣議決定
第一 方針
大東亜戦争の現段階に対処し、教育練成内容の一環として学徒の戦時動員体制を確立し、学徒をして有事即応の態勢たらしむると共に、之が勤労動員を強化して学徒尽忠の至誠を傾け、其の総力を戦力増強に結集せしめんとす。 (カタカナをひらがな表記とし、適宜句読点を加えた)