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紙ふうせんだより

紙ふうせんだより 12月号 (2017/12/20)



皆様いつもありがとうございます。ついに12月です。今年一年間、本当にありがとうございました。どんな一年でしたか。いろいろありましたね。いろいろあると人は今の状況だけではなく、自分の歩んだ道を振り返ります。そこに必死に這いつくばるように歩みを進めてきた自分を見出し、その道のりが過去から現在へ繋がってきた事が解ると、これから先の未来にも道が繋がっていると思えて、いろいろあるけれどその辛さを乗り越えていく事ができます。しかし、歩んだ道が霧の中に消えて見つけられない時があります。アイデンティティ・クライシス(クライシス=危機)という状況です。
アイデンティティ・クライシスとは
アイデンティティという概念は発達心理学のエリクソンが提唱しました。自己同一性とも訳されます。自分とは何者か。何をしたいのか。何をするべきか。「自分探し」の過程にあるとき、それはアイデンティティ確立のための悩みとされます。しかし、アイデンティティの課題が生じるのは、一般に思われているような思春期から青年期の若者のみではありません。
功成り名遂げたような人が、突然変わった事などを始めるなどして周囲を驚かすというような時、その内面では「今のままで本当に良いのだろうか」という疑問がふつふつと湧いてきて、「こうあるべきだ」と思っていた人生を続けられなくなってしまっている事があります。このような中年の危機(ミッドライフ・クライシス)に直面した俳優のキアヌ・リーブスは、その時の心情を「自分がどこにいるのか、どこから来たのか、何をしているのかさえ、わからなくなるほどだった」と述べています。青年期以降にもこのような危機を迎える事が多くなった背景には、社会の変化の激しさがあります。例えば先祖から子孫へと続く営みの中に自分がしっかりと定位されるような昔ながらの農耕社会の場合は、大人になる事の手本は親であり親を継ぐ事がそのまま社会からの承認でもあり、そのような生き方に疑問を抱く余地はほとんど無く、自己を意識する機会も少なかったでしょう。しかし現代に生きる人は、親の生きた社会と子を取り巻く社会状況はまったく異なっていますから、“社会とは何か”“自分とは何か”という命題にほとんど一人で向き合わなければならないのです。「私は○〇になりたい」と明確に目標を持って突き進んでいる時は迷う事はありませんでした。しかし一段落してみると「一体これで良かったんだろうか」という疑問が鎌首をもたげ不安を呼び込みます。自分は“成功しているにも関わらず”どうして不安にさいなまれるのだろう…。このようにアイデンティティ・クライシスは、確立された自己を不変のものとして信じきってしまうような頑な自己認識によっても、引き起こされる事があります。アイデンティティは体細胞が代謝によって入れ替わっていくように、実は常に再構成されているものなのでしょう。周辺環境や心境や体内環境などが大きく変化した時、アイデンティティの再構成が追い付かないと“自分が自分である”という感覚の連続性や統一感も揺らいでしまうのです。
『私は誰になっていくの』アイデンティティ・クライシスの苦悩
46歳で若年性認知症となったクリスティーン・ボーデンが、当事者としての心の内を語り話題となった著作は、『私は誰になっていくの?』というものでした。認知症の方も記憶が失われていく事によって、過去から現在に繋がって自分を形づくるさまざまな関係性がわからなくなり、自分が消えてしまうようなアイデンティティ・クライシスに直面します。
 アイデンティティ・クライシスという概念で、若者から要介護高齢者に至るまでの悩みを説明して見せたのには理由があります。まず第一に、認知症による“苦悩”は 病気による特殊なものでは無いという事への理解です。病気としての認知症は脳の委縮によって引き起こされ、確かにそれは不可逆的に理解や判断や行動を組み立てる力を奪います。しかし、だからといってそこから生じる苦悩も不可逆的に強まっていくものではありません。第二に、認知症の方の苦悩と、若者が世界に向かって自らを問う苦悩の共通性を理解する事で、介護者は自分の体験をもとに想像力を膨らませて、より利用者さんの気持ちに寄り添う事ができるからです。中高年になれば誰しもクライシスを一度や二度体験し、乗り越えていった事でしょう。その経験から良いケアへの考え方を導き出す事が可能なのです。第三に、介護という対人支援の本質は“健康な者が不健康な者を支援する”“強いものが弱いものを支援する”というような一方通行では決して無いのです。支援する側も同じ人間であり、支援を通して利用者さんから学び励まされ、自身のクライシスを越えてく力を頂く事ができるのです。
クライシスを越えて『私は私になっていく』
 その後のクリスティーンさんは再婚しブライデンと改姓、『私は私になっていく』というタイトルの本を執筆し、“今”という時間にしか生きられなくなった事によって磨かれた自己認識を次のように記しています。「私の魂としての自己は、過去も未来もない『今』という時に存在している。仏教の『刹那』という言葉は、このように時間の枠から離れた存在感覚を捉えたものだ。万物が『今』という場所に存在することを理解すれば、時間の外に在られる神がなんであるかをより深く知ることができる」「私たちにわかったことは、『自分が何を言うか、何をするかが私なのではなく、私はただ私である』ということだ。自分が誰かは魂が決めることだ。認知と感情は人生で変化するが、私たちの本質である魂は神の手の内にある。」
「神」という言葉に馴染みがなければ、それを「永遠」と置き換えても良いでしょう。クリスティーンさんは有限で個人の所有物と思われていた“命”の本質に“永遠なるもの”“不滅なるもの”を見たのです。この時「自己」という限定された認識は、自他を隔てる壁を無限の側に越えていきます。この『私は私になっていく』という認識は前号の『外側の世界が不自由であるほど、心は自由になっていく』と同じ方向を見ています。自分を見失った時“自分”にこだわる小ささに気が付いたならば、より大きな自分を発見できるのです。
 介護の仕事は命と向き合う仕事です。私たちが介護という“場”を利用者さんと共有する時“あなたは私であり、私はあなたである”というような、深い共感を味わう事があります。これも限定された自己を越えていく実感の一例でしょう。来月から新年です。今までの自己を越えて、より積極的に新しい「私」になっていけるように念願しています。本年はどうもありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
≪介護の疑問に答えます≫
【認知症ってどんな病気?】
疾病の基礎知識としての「認知症」について
質問を受けたらたらどのように答えますか?
認知症とは、脳の認知機能(思考や判断や記憶)に問題が生じている“症状”を指します。そのため原因に関わらず“認知症” と一括りにしてしまうので誤解を生んでいます。また、加齢も含め様々な病態が複合するので本当の確定診断は難しいのが現状です。
〇病気としての“認知症”ではない認知症状
入院や環境の変化(子供との同居や引っ越しや配偶者の死)は、心理的に大変な負担になります。このような時、ウツ状態(老人性うつ)になってしまい言動が認知症とそっくりになる事があります。周囲が焦らずに本人の気持ちに寄り添ったり、本人が生活の目標を見つける等すると改善しますが、医者が安易に認知症の薬(塩酸ドネペジル/商品名アリセプト)を出してかえって症状が悪化するケースもあります。
〇病気とされる“認知症”
<アルツハイマー型認知症>一番多く全体の70%、アリセプトの早期服薬で進行を遅らせる事ができると言われています。病気とされる認知症を疑う時は、大きな病院で脳血流検査やMRIなどの画像検査を受けた方が良いでしょう。
<レビー小体型認知症>床のシミが“虫”に見える等、幻視が特徴的。アルツハイマーやパ
ーキンソン病との誤診も多く、アリセプト服用で悪化する事もある。
どちらも加齢により脳に老廃物が蓄積した為(潜伏期間は長い)と考えられており、進行すると画像検査で特徴的な脳委縮が見られます。しかし委縮があっても発症しない人もあり不明な点も多い。病的な認知症は「夕食を食べた事自体を忘れる」というように記憶全体が抜け落ちます。他には少ない症例ですが前頭側頭型認知症もあります。
〇改善する可能性の高い認知症状
<正常圧水頭症>脳脊髄液の循環が悪くなり脳を圧迫するために『認知症状・歩行障害・尿失禁』が現れます。認知症が進んだとばかり考えて見過ごされる事も多いのですが、脳脊髄液を減らす処置をすると脳への圧迫が無くなり、症状が軽快します。
<加齢による認知症状(物忘れ)>加齢による物忘れは普通の事ですが、忘れてしまった事を必要以上に悔んだりすると、精神的な落ち込みから症状が悪化(老人性うつ)する事があります。しかし基本的には、適応力という生物本来の力がありますので、本人のペースで慣れていく事や、本人なりの工夫によって生活上の問題を解消させる事が可能です。「夕食は食べたけど、何だっけ」というように忘れるのはエピソードの一部です。  
〇他の病気などの合併症としての認知症
<脳血管性認知症>高血圧や高脂血症や糖尿病の影響は全身に長期間に及ぶため、脳の血管が傷ついたり詰まった所(微小脳梗塞)が増えた事による血流障害から起こります。
<その他>頭部打撲後の硬膜下血腫(取り除けば治る)や、多量長期間の飲酒やビタミンB1欠乏などによる脳の変性(アルコール性認知症・ウェルニッケ脳症)でも発症します。
【介護保険制度改正について】
来年は医療・介護保険の同時改正とあって、大幅な変更が予想されています。読売新聞の12/1の記事では「介護報酬、プラス改定で調整…上げ幅は微増」と、報酬増に微妙に期待の持てる見出しですが、記事を良く読み込むと実質的には取得の難しい「加算」を設ける事などで(紙ふうせんでは一度も使った事のない「生活機能向上連携加算」などが今もある)“微増”の印象付けをしているようです。毎日新聞では12/6に「介護報酬改定 自立支援、手厚く加算」との記事があり、介護度を改善するなどした“自立支援”は評価するものの、生活援助の報酬を減らしたり、「月に100回以上の利用は過度」として生活援助の過剰利用のプランには行政がメスを入れ利用抑制するような方向性が示されていました。
この“自立支援”の評価対象は、主に通所介護や特養のようです。なるほど、前回の改定で大幅マイナスされた分野ですね。訪問介護はというと、プラス改定はあまり期待できないようです。“自立支援”は重要視される方向性ですが、“共に行う”“自立支援的家事”は今までも身体介護で算定できましたが、その基準や内容を明確化する方向性のようです。辛くなるという事でしょう。また、生活援助のマイナス方向の理由は“緩和された基準(ヘルパー2級や初任者研修以下の資格創設)での介護職”を導入する事によって、基準が緩和されたのでマイナスで介護福祉士も同一報酬(同一労働同一賃金の理由から?)とするような案が検討されているようです。どうやら生活援助・身体介護合わせたトータルでは、実質的なマイナス改定となりそうな雰囲気です。
ケアマネジメントオンラインの12/12の記事によると、社会保障審議会での議論の要点がまとめられていました。訪問介護に直接的に関わるところを引用します。
■生活援助、一定以上の回数で市区町村に届け出
国が定める基準回数を超えて生活援助中心型の訪問介護をケアプランに位置付ける場合、ケアマネは、市区町村にその内容を届け出ることが義務付けられる。届け出を受けた市区町村は地域ケア会議を開き、ケアプランの内容を検証。その結果によっては、サービス内容の変更を促す。
基準回数は、「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」の考え方で示される。具体的には、18年4月までに公表される。


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